インドの医学

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インドの礎になったインダス文明は、紀元前2500年からインダス川流域(インド北西部とパキスタン地域)に栄えた古代文明で、「ハラッパー」や「モヘンジョダロ」が代表する都市です。

私は、2004年の7月、インドの次にパキスタンを訪れ、カラチに着いて国立博物館でヨガの原点のテラコッタを見ました。そして、モヘンジョダロに行き、沐浴をする大きなプールや水洗トイレ、灌漑設備を備えた人口数万人の古代文明を見て、ここが、メソポタミアなどの他の文明との貿易が活発だったことがわかっています。

モヘンジョダロに近くのホテルに泊まり、朝、気温を測ると39度ありました。地元の人々は、木陰で休んでお茶を飲んでいました。遺跡を一通り見た後は、気温が49度まで上がっていて、ホテルでシャワーを浴びようと水を出したら、熱いお湯しか出てきませんでした。

前日、インダス川で飲んだ水が効いて、昨日はずっと下痢が続いていたので、体力はありませんでした。午後は、ベッドでずっと休んでいました。

パキスタン・カラチのパキスタン国立博物館に収蔵されているテラコッタ像の中には、坐禅を組み瞑想する姿があり、勃起したペニスも描かれているため、ヨガの起源といわれています。

古来ヨーガの教えでは、私たち人間の身体を粗大身、微細身、原因身の3つの次元に分けて考えていました。
○粗大身
 粗大身とは、私たちが住んでいる物質的世界の次元で、目に見え手で触れることのできる西洋医学的次元での肉体的存在です。
○微細身
 微細身とは、粗大身の肉体が死滅してもその存在を失わず、死後も存続し、また再生しても肉体と密接な関係を保ち、肉体を高い次元から支配する霊体のような存在です。生命エネルギー(プラーナ)の通り道である「ナーディー」とその通り道の結合点である7つの「チャクラ」がここに存在します。
○原因身
 原因身とは、粗大身、微細身の背後にあり、常にそれらと密接な関係、相互関係を保ちつつ、それらをコントロールし、生命エネルギーを送り、個人が個人として存在しうる原因であり、粗大身と微細身というその人の存在を可能ならしめている大きな存在です。

●アーユル・ヴェーダとは
 紀元前1700~前800年は初期ヴェーダ時代と呼ばれ、病気はつきもの(憑依)や外部からの災い、そして毒物によるものが知られ、呪術や宗教にもとづく治療がなされていました。しかし紀元前200~紀元後400年になると、「生命の知識」を意味するアーユル・ヴェーダを中心とした合理的医学の時代に入ります。そして薬草の効果が科学的に証明されるようになり、呪文や護符に頼ることなく、薬草や食物によって病気を治す医学へと発展していきます。
 アーユル・ヴェーダでは、自然界は空、風、火、水、地の5元素からなり、空から風が生じ、風の摩擦熱から火が生じ、火の熱によりある要素が溶けて水が生じ、さらにそこから地の要素が作られたと考えます。また、人体はドーシャ、ダートゥ、マラの3種類からなると考えています。

○ドーシャには、空と風の元素のヴァータ、火と水の元素のピッタ、水と地の元素のカパの3種類があり、この3つのドーシャが人体を巡っていると考えられ、体液と訳されることもあります。これらの3要素をトリドーシャと呼びます。
 ほとんどの人では、どれかのドーシャが優り、その不均衡がその人の体質を特徴づけるため、体質は①ヴァータ、②ピッタ、③カパ、④ヴァータ・ピッタ、⑤ピッタ・カパ、⑥ヴァータ・カパ、⑦ヴァータ・ピッタ・カパの7種類に大別されます。

★またダートゥとは、身体を維持するために必要な構成要素で、乳糜(リンパ)、血液、筋肉、脂肪、骨、骨髄・神経、生殖器官の7要素からなっています。そしてマラは、汗、尿、便の3つの排泄物を指します。
アーユル・ヴェーダにおける健康とは、トリドーシャの均衡が保たれ、7つのダートゥが正常に機能し、3つのマラが順調に生成され排泄される状態のことをいいます。
 
○しかし、仏教医学では、カパ(水)、ピッタ(火)、ヴァータ(風)に加え、水・火・風の3つの要素が合併した地の要素を付け加え、4つを要素としています。これらの考え方が、次のタイ伝統医学の考え方のもとになるのです。

●アーユルヴェーダは、内科のチャラカと、外科のスシュルタに大きく二分されます。現在行なわれているのは主にチャラカ系であり、スシュルタ系はほとんど顧みられていません。しかし、ハタ・ヨーガと併せて学ぶのであれば、スシュルタにこそ注目すべきでしょう。なぜなら、ハタ・ヨーガを行じるさいに求められる微細身――プラーナの流れる脈管やチャクラから成る身体は、外科の根本文献『スシュルタ・サンヒター』を第一次資料とする「マルマ論」にもとづいているからです。
 マルマという語の初出は『リグ・ヴェーダ』です。神々の王インドラが、竜神ヴリトラのマルマを攻撃して、これを殪した(倒して殺した)、という伝説があり。『スシュルタ』はその3千年後に、戦場で負傷兵の体を「切ったり貼ったり」する従軍医師たちのマニュアルとして編まれました。
「マルマ論」は、それぞれのマルマの構造(筋肉、脈管、靱帯、骨、関節)、そこを負傷したさいの結果(その日のうちに死、2週間以内に死、矢を抜くと死、障害が残る、激痛をもたらす)を中心にまとめられています。そうしたマルマが107列挙されています。
 アーユルヴェーダでのマルマは、東洋医学のツボとほぼ同じ位置付けの、心とカラダの交流点で、身体上のポイントと定義されている。
 「マルマ」には「傷つきやすい」「敏感な」という意味があり、アーユルヴェーダの古典「スシュルタ・サンヒター」には、人には107のマルマ・ポイントがあるとされている。
 マルマは、生活習慣によるストレスや不純物が徐々に蓄積されやすく、それにより身体のエネルギーや意識の流れが妨げられてしまうことがあり、非常に繊細で重要な場所とされています。アーユルヴェーダにおいては、マルマ・ポイントを中心に適度に刺激することによって、身体の回復を促す施術等も行われています。

●アーユルヴェーダで行われるマッサージは、「パンチャ・カルマ」と呼ばれる長期的な施術の中の1つとして行われます。パンチャ・カルマは最低でも3週間以上はかかる施術のため、日本では手軽に行えるオイルマッサージが浸透したのでしょう。アーユルヴェーダマッサージでは、7つのチャクラとマルマを刺激します。
 オイルは、アーユルヴェーダマッサージに欠かせないものです。本場インドで行われるアーユルヴェーダマッサージでは、専用の天然植物オイル「シッダタイラ」を使用しますが、日本では入手が困難なため、日本のエステ店では、ごま油(セサミオイル)やアーモンドオイルを使用しています。ごま油の中でも、香りがほとんどなく、さらっとした「白ごま油」がアーユルヴェーダマッサージに最適ですが、アレルギーなどで、ごま油が合わない方は、オリーブオイルを使用しても構いません。ヴァータ体質の方にはごま油、ピッタ体質の方にはオリーブオイルやココナッツオイルがおすすめです。なお、オリーブオイルやココナッツオイルを使用する場合は、オーガニックなものを選ぶと良いでしょう。

●南インドに伝わる武術「カラリヤパヤット」には、足だけで行う全身のオイルトリートメント「ウリチル」いう施術があります。
 マッサージは、指や手のひらを使って揉んだり指圧したり、ほぐしたりする方法が多いですが、手だけでなく、足の裏で体を踏んで行うもので、中国や日本でも古くからある技法のひとつです。
 このトリートメントは、アーユルヴェーダの教えに基づくエネルギーのポイント「マルマ」を重要視して施術されます。 マルマは全身のエネルギーの流れのバランスを取るのに大切なポイントとなっていて、ウリチルはマルマを刺激しながらエネルギーのバランスを整えていくトリートメント方法です。

このウリチルでは、施術される側の体にオイルを塗り、施術者が足で圧をかけながら施術するので、施術側も柔軟性やバランス感覚を養うことができます。そのとき施術者は滑らないように、天井から吊るされた紐を掴んで行います。
○ウリチルには、以下の特徴があります。
 手を使って体を揉んだりすると力もいり、手や指を痛めてしまう場合もあります。また、大きな体格の男性を女性の力で揉んだり、ほぐしたり、圧をかけるときも、力が足りずお互いに不満がたまることもあるかもしれません。
しかし、足を使えば、自重を利用しながら圧をかけていくので、力のない方でもとても楽に施術ができます。この手技は、タイのヤップマッサージ、フーレセラピー、足圧マッサージの基になっているかも知れませんね。